BREAST AND ENDOCRINE SURGERY

唐 宇飛

現時点におけるバランスのとれた
最良の医療を心がけています

乳腺・内分泌外科 教授
唐 宇飛

乳癌診療ガイドラインに沿って、乳癌を中心に乳腺疾患の診断、治療を行っています。外科手術では標準的胸筋温存乳房切除術、乳房温存手術、センチネルリンパ節の同定による腋高リンパ節郭清の省略、根治性を保ちつつ、美容及び機能の面で十分配慮した手術を実施しています。内視鏡補助下の手術やセンチネルリンパ節生検では近赤外線カラーカメラシステム(HEMS,Heper Eye Medical System)及びアイソトープ(RI)法を併用することで、さらに手術時間の短縮と整容性の両立が得られています。最近では乳頭乳輪温存乳房切除術を積極的に行っております。術後は遺伝子診断による化学療法の必要性を総合的に判断し、不要な治療を回避するように努力しております。

また最近では、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の検査および治療も当院遺伝外来と連携をとりながら積極的に行っています。進行再発乳癌に対しては、標準治療の他に新しい薬剤を用いた多施設の臨床試験に参加しております。また、放射線科など他診療科と連携して、高齢などリスクの高い症例にも安全に手術や放射線治療を行える体制を整えており、術後化学療法も外来治療センターなどを利用して通院治療が可能な体制になっております。放射線治療センターと共に一部の早期乳がん(Tl)に対し、手術せずに陽子線治療だけの臨床試験も開始しました。(メディポリス国際陽子線治療センター

<手術実績>

2021年実績

乳腺 乳癌手術 温存手術 30
乳房切除 69
(うち、乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘) 11
(うち、乳房再建症例) 14
(うち、センチネルリンパ節生検) 73
腫瘍摘出術 7
リンパ節生検、腋窩郭清 11
ポート造設 4
その他(VABなど) 4

2020年実績

乳腺 乳癌手術 温存手術 30
乳房切除 62
(うち、乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘) 12
(うち、乳房再建症例) 13
(うち、センチネルリンパ節生検/腋窩リンパ節郭清) 66/27
腫瘍摘出術 5
リンパ節生検 13
切開生検 1
その他 23

2019年実績

乳腺 乳癌手術 温存手術 31
乳房切除 63
(うち、乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘) 11
(うち、乳房再建症例) 9
(うち、センチネルリンパ節生検) 64
腫瘍摘出術または切開生検 28
リンパ節生検、腋窩郭清 23
CVポート挿入など、その他 3

2018年実績

悪性 乳房切除術 45
(SNB) 24
(Ax.) 12
(SNB→Ax.) 6
(Sampling) 1
乳房温存術(内視鏡) 18
(SNB) 11
(Ax.) 5
(SNB→Ax.) 2
(Sampling) 0
乳頭温存乳房切除術 18
切開生検 2
皮膚生検 0
センチネルリンパ節生検 3
腫瘍摘出術 5
リンパ節摘出術 2
リンパ節郭清術のみ 2
ポート挿入術 1
良性 腫瘍摘出術(内視鏡) 8
乳管腺葉区域切除術 3

2017年実績

悪性 乳房切除術 67
(SNB) 41
(Ax.) 17
(SNB→Ax.) 0
(Sampling) 2
乳房温存術(内視鏡) 22
(SNB) 20
(Ax.) 2
(SNB→Ax.) 6
(Sampling) 0
乳頭温存乳房切除術 25
切開生検 1
皮膚生検 0
センチネルリンパ節生検 0
腫瘍摘出術 1
リンパ節摘出術 8
リンパ節郭清術のみ 2
ポート挿入術 10
良性 腫瘍摘出術(内視鏡) 9
乳管腺葉区域切除術 6

<乳癌診療領域>

新しい乳癌に対する手術:乳頭乳輪温存乳房切除術

乳癌治療成績の向上に伴い、術後患者の社会復帰が日常的となっております。術後患者のQOLをさらに高めるために、昨年末より乳頭乳輪温存乳房切除術+乳房再建術を開始しております(診療実績表)。本術式は患者の自分自身の乳頭乳輪を温存して再建術ができるうえ、前胸部に手術痕を残さないため、患者には非常に満足度の高い乳癌手術方法となっております。診療保険改訂により保険取採もされている新しい乳癌の手術法となっております。

新しい乳癌に対する手術:乳頭乳輪温存乳房切除術

新型器械と新技術で手術負担の最小限に

これまで乳がん手術のセンチネルリンパ節生検において蛍光色素法を用いた近赤外カラーカメラシステム(HEMS ; Heper Eye Medical System)で手術時間の短縮に努めてきました。現在、さらに短時間で正確なセンチネルリンパ節生検を行うため、ガンマ・ファインダ-IIを用いてアイソトープ(RI)法も併用しております。さらに、内視鏡鏡視下手術も行っており、腋窩アプローチをすることにより、できるだけ乳房に傷を残さないように心かけています。さらに、腫瘍径の小さい(T1)乳癌に対し、放射線治療センターと共に手術せずに陽子線治療だけで乳がんを治療する臨床試験も開始しました。

新型器械と新技術で手術負担の最小限に

新しい薬剤による有効利用、不必要な化学療法を避ける

乳癌の内分泌療法や化学療法おいては新しい標準治療薬を積極的に採用し、使用しているほか、各種多施設共同の臨床試験に参加しています。また、遺伝子診断(Oncotype DXなど)により、不必要な抗がん剤投与を減らすように務めております。さらに、本学がんワクチンセンターとの共同で乳がんペプチドワクチン療法の臨床試験による乳がん治療も、引き続き進行しております。

家族性乳癌の診断・治療

日本人女性の乳がん罹患者数の5%から10%がHBOCであり、全乳がんの4%がBRCA1/2 遺伝子変異に起因する乳がんです。令和2年4月から遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hcrcdita Breast and Ovarian Canccr Syndrome,HBOC)の既発症者に対するリスク低減乳房切除術(Risk-Reducing Mastectomy,RRM)。乳房再建術ならびにリスク低減卵管卵巣摘出術(Risk-Reducing Salpingo-Oophorcctomy,RRSO)が保険適応となりました。当院では遺伝専門外来設置のもと、BRCA遺伝学的検査、RRM、RRSOの実施可能施設であり、HBOCを含む、あらゆる遺伝疾患にも対応しています。保険適応となるのは、乳がん既発症例の中では以下のいずれかの項目に当てはまる方が対象です。

  1. 45歳以下の発症
  2. 60歳以下のトリプルネガティブ乳がん
  3. 2個以上の原発乳がん発症
  4. 第3度近親者内に乳がんまたは卵巣がん発症者がいる
  5. 男性乳がん
  6. 近親者にBRCA1/2 遺伝子変異がある

上記以外の場合は、すべて自費診療となります。

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