TREATMENT

消化器外科

<進行肝細胞がんに対する当科のこころみ>

コンバージョン切除:切除不能な肝細胞がんに対する集学的治療

コンヴァージョン切除とは、がんの大きさや進行度の観点から診断時に切除が不能と判断された肝細胞がん(図1)に対して、消化器内科や放射線科と協力して化学療法(肝動注化学療法、肝動脈塞栓療法、全身化学療法)や放射線治療を行い、切除可能な状態に縮小させて(図2)、その後に積極的に肝切除を行なうことです。各科が協力して治療を行うことで、進行がんでも良好な成績が得られています。(Anticancer Research August 2020, 40 (8) 4773-4777)

集学的治療を行ない長期生存を目指す

図1:切除不能な肝細胞がんに対して集学的治療を行ない長期生存を目指します

切除可能な状態になった肝細胞がん

図2:化学療法や放射線照射を行い切除可能な状態になった肝細胞がん

肝切除を行なった症例

図3:診断当時切除は不能だったが化学療法により切除可能な状態になり肝切除を行なった症例

臨床試験:切除可能な進行肝がんに対する術前化学療法後肝切除のこころみ

技術的には切除が可能だけれど、進行した肝細胞がんで切除だけでは根治が見込めないがん(局所進行肝細胞がん)に対しても、がんの根治を目指して積極的に肝切除を行なっています。

我々のこれまでの検討で、以下の様な症例はがん遺残のない肝切除を行なっても、術後早期に遠隔転移(肺転移や骨転移など)や肝内の多発転移再発をきたす症例が多く極めて予後が悪い事がわかりました。

  1. 腫瘍径が5cm以上で複数のがんが肝内にあるもの
  2. 左右の門脈/門脈の主幹にがんが進展しているもの(Vp3, Vp4門脈腫瘍栓)
  3. 肝静脈の主幹/下大静脈にがんが進展しているもの(Vv2, Vv3肝静脈腫瘍栓)


これらの症例はがんの進行度ではUICC Stage IIIA, IIIBとなり、この進行度の肝細胞がんの患者さんに対して臨床試験として術前化学療法後に肝切除を行う臨床試験を行なっています(UMIN 000030739/臨床試験担当医師:肝胆膵外科 後藤祐一)。

<術前化学療法後肝切除の具体的な内容>

  1. 当院の倫理委員会で定めた適格基準を満たし除外基準に該当しないUICC Stage IIIA, IIIBの患者さんが対象となります。
  2. 詳細を説明し、臨床試験参加を希望されたら試験登録となります。
  3. 入院して肝動注化学療法を開始します(New FP療法)、約4週間の入院治療が必要です。
  4. 退院して通院化学療法を2週間に1回の頻度で合計4回行います(約2ヶ月間)。
  5. 再度切除可能かどうか判定するCTやMRI検査を行います。
  6. 切除可能と判断したら肝切除を行います、この時点で遠隔転移が出現するなど切除不能となれば、そのまま化学療法を継続します。
最大腫瘍径5cm以上で多発する肝細胞がんの症例

図4:最大腫瘍径5cm以上で多発する肝細胞がんの症例、右葉切除とS4部分切除で遺残のない切除は可能と考えられたがUICC StageIIIAに該当し、臨床試験への参加を希望されたため化学療法(New FP療法)を行い腫瘍は縮小(白く写っている範囲は抗がん剤が行き渡った領域)、新たな病変や遠隔転移が出現しないことを確認し肝切除を行なった

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